親から子に貸家の贈与をしたら、貸家敷地の相続税評価はどうなるか?
ある資産家のご家族から、相続対策のご相談をいただきました。
お父さんである甲さんは、貸物件をたくさん所有しており家賃収入がそこそこあるため、現預金が毎年増えている。なんとか、この家賃収入を息子の乙さんに移し、自分の財産が増えることを抑えたい、とのことでした。
父=甲さん
息子=乙さん
そこで、貸物件のひとつであるA倉庫を、“建物だけ”息子乙さんに贈与し、家賃収入を乙さんに分散させることにしました。これで毎年の現預金増を抑えることができます。
敷地は、乙さんに無償で貸し付けることにしました。
「でも、土地を無償で息子に貸すとなると、私の相続の時のA倉庫の敷地の評価ってどうなるんだろう?以前やってもらった相続税評価では、たしか貸していることによって減額されていたよね・・・?」
土地と建物を所有している人が、その建物を貸している場合、その建物の敷地のことを貸家建付地といいます。他人に貸しているので、その敷地利用権が制限されるため、相続税評価も減額されます。
ざっくりいうとこんな感じです。(計算方法・詳細は割愛します)
自用地(土地を自分で使用している場合) | 1億円 |
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貸家建付地(土地建物を誰かに貸している場合) | 8,000万円 |
通常、無償で貸していた土地を相続により取得した場合のその土地の相続税評価は、自用地評価とするのが原則です。
では、建物のみ息子に贈与し、土地は無償で貸していた、甲さんのA倉庫の土地は、自用地評価(1億円)にしないといけないのでしょうか?
答えはNOです。
ただし、貸家建付地評価ができる条件は、贈与する前と貸倉庫の借家人が同じである場合です。
判例では、父甲さんとA倉庫の借家人との間で結ばれた敷地利用権は、建物が第三者(息子乙さん)に譲渡された場合においても、侵害されることはないと解釈されています。
よって、建物の所有者が息子乙さんに変わったとしても、A倉庫の借家人が変わらなければ、その敷地は貸家建付地として評価ができます。
「そうなんだね!このご時世どうなるかわからないけど、20年契約の更新をしたばかりだし、このままA倉庫の借主さんがずっと借り続けてくれれば、そのまま評価減もできるんだね。ちょっと安心しました。」